kausatu2011.11.10

マツ枯れについて⑫(2011.11.10)

平野部のマツのつづき

写真４４

写真の右側のスギは『スギ枯れ病について』において「まるでやじろべえのようです」といって紹介した写真１１のスギです。左側のマツは写真２で「アカマツの典型的な姿をしている」といって紹介したマツです。

写真の灰色の線の高さに逆転層が何度も発生したであろうことは『スギ枯れ病について』において述べてきました。右側のスギの葉がくびれたようになくなっているのは、塩化水素などの被爆によって枯れてしまったものであることも述べてきました。

左側のマツの梢端はスギと同じ高さですが、マツの梢端は右に傾いています。これはスギと同じ時期に塩化水素などの被爆によって梢端枯れになり、その後家庭ゴミの自宅焼却が禁止されたので、枝の１本が勝ち残ってここまで伸びてきたものと思われます。

もし現在も、家庭ゴミの自宅焼却を続けていれば、右に傾いた枝は伸びることができず、存在しなかったかもしれません。そしてこのマツは梢端がフラットなマツになるか、あるいは全体が枯れてしまったかもしれません。

写真４５

左側のマツの梢端を拡大しました。右に傾いた枝はいつごろできたのか、孫枝のついている箇所を数えればわかるのですが、葉が邪魔をして正確にはわかりません。わたしとしては、だいたい７～８年前、つまり家庭ゴミの自宅焼却が禁止された頃ではないかと推測しています。

もちろん、マツノシンマダラメイガなどによって新梢を食害され、この枝が取って代わった、という可能性もあることは否定しません。

写真４６

これは、よく管理されたマツ林の中の１本です。見ると梢端の幹が人の手のよって切られています。なぜ切ったのかといえば、梢端が枯れたからです。スギと違って、管理された林では枯れたマツは速やかに倒伐されますし、部分枯れも切り取られます。

枯れた原因は何かといえば、逆転層と塩化水素などの被爆によるものです。カミキリとセンチュウによるものであれば全体が枯れるはずです。また、切られた幹は見たとおりの太さになっているので、新梢のときに食害されたものでもありません。

高さとしては、写真４４と同じように、まさに逆転層が発生しそうな高さです。ついに梢端枯れを見つけました。とは言うものの、これ１本では説得力がありません。

写真４７

春には枯れていなかったマツが枯れてきました。左側の２本も葉が黄変しており、枯れてしまうことは確実です。これもカミキリとセンチュウによるものでしょうか。

こちらによれば、マツは裸地植物であり、混交林では広葉樹にとって変わられ、マツは枯れていく宿命にあるといいます。マツ林を維持するためには下草刈りを行い、林床は貧栄養化に保たなければならないはずです。松枯れの原因は管理不足もあるのではないでしょうか。

さて、枯れていないマツを観察して、マツ枯れの原因を考える、という試みは始めてだったのではないでしょうか。しかし、マツ枯れに関しては生きたサンプルがあまりにも少なくて、満足のいく結果は得られませんでした。「マツ枯れの原因は逆転層と家庭ゴミの自宅焼却によって発生した塩化水素などの有害物質である」というわたしの仮説について、誰もが納得するような証明はできませんでした。

しかし、私の考えは「マツ枯れについて②③」に述べてあります。家庭ゴミの自宅焼却が禁止されて８年余り経ちます。今後もマツ枯れは完全にはなくならないと思いますが、「全山が紅葉したように見える」というような大規模なマツ枯れはなくなるはずです。わたしの考えが正しいかどうかは、時間が証明してくれるでしょう。

これで「マツ枯れについて」は一旦終わりますが、花粉観察のかたわらマツの観察もつづけ、新しい事実に気づいたらその時点で報告します。

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