kausatu2011.09.28

マツ枯れについて⑦(2011.09.28)

４．Ｙ字型の幹はどうしてできるのか

広葉樹では幹がＹ字型になっているのはありふれた光景で珍しくもないのですが、針葉樹ではツリー型といいますか、鋭い二等辺三角形をした姿が一般的で、特にスギの密植林を遠くから見ると針を並べたように一直線に伸びた長い幹が印象的です。

ところがマツは同じ針葉樹でありながら、その枝ぶりは複雑怪奇で、行方定まらぬ迷路のような形をしているものが数多く見受けられます。それゆえ水墨画などにもよく描かれ、園芸用の樹木としても貴重な存在なのでしょう。

しかし写真１９のような育ち盛りの若木の姿を見ると、「マツだってどこまでもまっすぐ上に伸びていきたいんだ」という性質があるような気がしてなりません。問題は、その性質を妨害する何ものかがあるということです。

写真１４再

それではもう一度写真１４を見てください。ここでは２本のマツがＹ字型の幹になっていますが、二股に分かれた上半分を見ると、中央のマツはＵ字型をしており、右側のマツは鋭いＶ字型をしています。

なぜこういう形になるのか不思議に思っていたところ、武蔵丘陵の若木を観察しているときにその疑問が氷解しました。

写真２０

このマツは写真１９のマツの隣にありますが、幹として成長するはずの中央の新芽が枯れて手前に倒れ掛かっています。伸び始めた葉も枯れて白くなっています。周りの枝は成長してかなり伸びています。

つまりこういうことです。幹として成長するはずの新芽が枯れてしまったので、残された枝が成長してどれか２本が勝ち残ると、写真１４の中央のマツのようにＵ字型の幹になるのです。

ここでは上に伸びた枝が４本あるので、そのうちの２本が勝ち残ることになります。いままでの観察では３本が勝ち残った例は見たことがありません。

それではＶ字型の幹はどうしてできるのかというと、おそらく幹の新芽は枯れずに残り、それともうひとつ、枝の新芽のうちの１本が勝ち残ったものだと思われます。鋭いＶ字型を形成するためには、可能性としてそれしか考えられません。

写真２１

さらに写真２１のマツはＵ字型を半分に割ったようなおもしろい形をしています。これはおそらく幹の新芽も枯れて、枝の新芽１本だけが勝ち残ったものだと思われます。同じような形の幹は所々に見受けられます。

写真２２

さて、写真２０の枯れた新芽をもぎ取ってみました。葉が伸び始めているので雄花の開花時期は過ぎていることになります。すると、６月か７月頃に枯れたことになるのでしょうか？

枯れた葉の長さは通常の４分の１くらいです。ここまで伸びたときに枯れてしまったわけです。いったい何故、枯れてしまったのでしょうか？（つづく）

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