kausatu2011.03.30

スギ枯れ病について⑤(2011.03.30)

わたしの感じた疑問についてですが、スギ枯れ病の原因が「逆転層と塩化水素のセット」によるものだと考えればうまく説明できます。

疑問１　近年になってスギの梢端枯れはみられない（梢端に枯れた葉のついたスギはみられない）。

写真１４

健康なスギをもうひとつアップしておきます。以下のスギと比べてみてください。このスギは逆転層の境界より低い位置にあるようです。周辺にある大径木はもっと高い位置が枯れています。

まず疑問１についてですが、これは、家庭ゴミの自宅焼却が禁止されたので、塩化水素を被爆することがなくなったからです。わたしの住んでいる地域に自宅焼却の禁止が周知徹底されたのは２００３年の春ごろだったと記憶しています。ですから、もう禁止されて９年も経過しているのです。

あらためて検索してみると、２００１年４月から野焼きの禁止、２００２年１２月から家庭用焼却炉の使用禁止となっています。ドラム缶の中で、或いはブロックで囲ったり、穴を掘ったりしてゴミ燃やすのも禁止されたのです。しかし、なかなか徹底されなかったので２００４年には罰則が強化され、５年以下の懲役または１千万円以下（法人は１億円以下）の罰金となったそうです。

疑問３　背の低いスギが梢端枯れを起こしているのに、背の高いスギは枯れていないことがある。

写真９再

次は疑問３から説明します。写真９を再びアップしたので見てください。写真に黒い線と白い線を書き入れました。推定ですが、黒い線は逆転層の発生したであろう上限であり、白い線は下限です。

疑問３は背の低い右のスギは梢端枯れしているのに、背の高い左のスギはなぜ枯れていないのかという疑問です。

その答えは、黒い線と白い線の間に逆転層の汚染が発生したからです。右のスギは梢端が汚染層にかかっていたので枯れました。左のスギはちょっとだけ背が高かったために、梢端は塩化水素を被爆することがなかったので枯れなかったのです。

そのかわり、梢端からすぐ下の部分は汚染層にかかっていたので、くびれたように枯れてなくなっています。やはり黒い線の近くの方が汚染濃度は高かったようです。もっと下に逆転層が発生したこともあるらしく、所々枯れて葉が少なくなっており、幹が見えています。このまま同じ状況が続けば先端まで枯れたかもしれません。しかし運良く、ここまで枯れたところで、家庭ゴミの自宅焼却は禁止されたのです。

写真１０再

この写真のスギも逆転層と塩化水素の影響を受けていますが、上の写真とかなり様子が違います。左手前の梢端枯れの部分が長く、それと同じような範囲で背の高いスギも影響を受けています。つまり、黒い線と白い線の広い範囲に逆転層が発生したと考えられます。

影響を受けた範囲が広いということは、それだけ何度も逆転層の発生をを経験したと思われ、それだけ長い期間汚染に晒されたのではないでしょうか。だとすれば、このスギはかなりの老木ではないかと考えられます。

おそらく、日本が高度成長期に入った頃には、この高さに達していたのです。そのために、逆転層の上に位置することができ、梢端は枯れなかったのです。しかし汚染に晒された部分は幹だけになっていません。なぜでしょうか。

梢端枯れのスギは幹だけになっています。ひょっとして、梢端が枯れなかったスギは、家庭ゴミの自宅焼却が禁止されてから、幹に短い枝が芽吹いたのでしょうか。だとしたら、それは梢端が枯れなかったから可能だったのではないかと思われます。

疑問４　なぜ、先端だけ枯れずに残っているスギがあるのか。

写真１１再

疑問３の謎が解ければ、疑問４も同時に解けてしまいます。この写真でも、黒い線と白い線のあいだに逆転層が多く発生したようです。なぜ梢端が枯れなかったかといえば、かろうじて逆転層の上に首を出すように存在していたからです。しかし無傷ではいられませんでした。

写真５や１４の健康なスギの形をこのスギに当てはめてみると、この背の高いスギが健康だった頃は、緑の線のような姿だったと思われます。すると、緑の線の内部にはかなり空白の部分が目立ちます。この空白の部分の枝葉は、塩化水素の被爆によって枯れてしまったのでしょう。

やはり黒い線の近くの汚染が酷かったようで、枝葉はほとんどなくなっています。もちろん白い線の下でも逆転層は発生したことがあるらしく、ところどころに枯れ枝が目立ちます。

疑問５　なぜ、背の低いスギは枯れているのか。

写真１３再

疑問５もすでに説明してしまいました。やはり、黒い線と白い線の間に何度も逆転層が発生し、左の短い枯れたスギは、梢端が逆転層の汚染に晒されて枯れてしまったのです。

下の方まで枯れ下がっているので、おそらく家庭ゴミの自宅焼却が始まった初期に梢端枯れを起こしたものと思われます。ですから、その時点で成長は止まり、徐々に枯れ下がっていったのでしょう。

この写真の３本の大径木から、もうひとつ分かることがあります。この３本のスギは、右のスギが遠くに、左のスギが近くにあります。３本とも見た目は枯れてはいませんが、白い線を境に上と下では全く様子が違うのです。白い線の下は葉が密で隙間はあまりありありません。それにひきかえ白い線の上は枝がまばらで、枯れ枝も多く、あきらかに逆転層と塩化水素の影響を受けています。

このように、スギの木を見てくると、スギの木の悲鳴が聞こえてきませんか。枯れていないように見えても、実態はボロボロなのです。わたしたちの無知な行いがスギの木を傷めつけ、いかに大きなダメージをあたえてきたか、わかってもらえたでしょうか。（　続く　）

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