kausatu2011.02.28

スギ枯れ病について①(2011.03.01)

以前、広言しておきながらのびのびになってしまいましたが、いよいよスギ枯れ病について考えてみたいと思います。

かつて我が家の周辺の民家では、住宅の裏に防風林を備えており、そこにはスギの大木が林立しておりました。ところが、日本が高度成長をはじめた頃から、スギの大木は先端から枯れていき、防風林から姿を消してしまいました。いま残っているのは、その後に植えられて成長してきた若木です。この先端から枯れていく現象を「梢端枯れ」と呼んでいるそうです。

写真１

ここで扱うのは、この「梢端枯れ」のスギについてです。写真１のスギも梢端枯れを起こしています。枝葉は枯れ落ち、枯れた幹は白化しています。このことから先端が枯れてから、かなりの年月が経過していると思われます。

今後このスギがすべて枯れてしまうかどうかは疑問です。さて、スギは、なぜ先端から枯れていくのでしょうか？

スギ枯れ病については、マツ枯れ病ほどのニュースにはなりませんでしたが、行政は気がついていて、いくつか調査報告をしています。こちらの埼玉県のホームページには、自然環境課の小川和雄氏の調査報告が紹介されています。

それによると、一時は酸性雨が疑われたが、スギは酸に強い植物であるとし、次のように報告しています。

----------ここから引用----------
スギ枯れの特徴や分布については以下の共通認識がある。
(1)大径木に多く、梢端から枯れ下がる。
(2)七〇年代に始まり、都市や周辺の平野部に多い。
(3)光化学オキシダントの移流経路や降水量が少ない地域で著しい。
(4)局地的な衰退の大きさは、参道などの孤立木≧突出木・林縁木＞林内木の順で、規模の小さいスギ林や道路際の衰退が目立つ、などである。

　山の斜面に植えられた林業用のスギ林に梢端枯れが無いのは、林内が高い湿度に保たれているからである。埼玉の都市部では一九五〇年以降、湿度が10％から15%も低下しており、七〇年代に急激にスギ枯れが進んだ事実に符合している。～これらの事実は、スギ枯れの主原因が「大気乾燥化による水ストレス」であることを明瞭に示している。
----------引用ここまで----------（カッコ内は省略しました）

小川氏は人工のスギ林ではなく、大径木の孤立木や突出木などに梢端枯れが多いことから、高度成長期に大気が乾燥化したために、水ストレスによって枯れたのだと結論づけています。つまり「高い所は水が届きにくいから枯れたのだ」ということでしょうか？「水ストレス」とは、葉から蒸発する水分に対して、根からの供給が間に合わなかった、つまり水不足によるストレスということでしょうね。

写真２

小川氏の報告では、１９９０年の東松山市箭弓神社にあるスギの梢端枯れの写真を紹介しています。同じ場所を２月３日に撮影したのが写真２です。

２枚の写真をくらべてみてください。建物は新しくなり、よく見ると枯れたスギはすでに代替わりをしていて、あたらしく伸びてきたスギも梢端枯れをおこしています。

写真３

同じ場所を裏側からアップで撮ったのが写真３です。先端から１０ｍくらいにわたって枯れているのがわかります。

ところで、スギの枯れ葉はなかなか落下せずに、いつまでも木に残っている傾向があります。ところが梢端枯れのスギをみると、どれもほとんど幹だけになっており、枯葉のついているスギは見受けられません。また枯れた幹は白化しています。このことは、枯れてからかなりの年月が経っていることを示しており、近年になって梢端枯れをおこしたスギはないということも示しています。

わたしがここで言いたいことは、スギの梢端枯れは水ストレスが原因ではないということです。もし、水ストレスが原因なら、近年になってもスギの梢端枯れは発生しているはずであり、特に昨年のような猛暑にさらされたなら、あらたに先端の枯れた大径木のスギが大量に発生してもおかしくありません。ところが、そのようなスギはいっこうに見受けられないのです。

写真４

見受けられるのは写真４のように全体が枯れてしまったスギです。このような枯れたスギが数本見つかっています。どれも１０ｍを越えたくらいの中低木です。枯れたスギには虫に食われた形跡がないことから、乾燥による水ストレスが原因ではないかと思われます。

重ねて言いますが、昨年の夏は中低木でさえ枯れてしまうほどの乾燥状態をだったわけです。それにもかかわらず、あらたに先端の葉が枯れたスギの高木はみあたりません。やはり「梢端枯れの原因は水ストレスである」という説明は無理があるのではないでしょうか。（　続く　）

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